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武蔵大学総合研究機構紀要 「Journal of Musashi University Comprehensive Research Organization」 >
No.17 >

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タイトル: 現代フランスの学生運動とその報道 : 大学改革に関する「ペクレス法」への抗議運動を事例として
その他のタイトル: Le Mouvement des etudiants dans la France contemporaine et "la desinformation voire la non-information des medias" : la contestation des etudiants de la loi Pecresse sur l'autonomie des universites
著者: 野呂, 康
発行日: 2008年6月5日
出版者: 武蔵大学総合研究所
抄録: "2007年8月10日,「大学の自律化に関する法」が議会で可決され,翌日には『官報』で公表された。この法律は正式名称を「大学の自由と責任に関する法」といい,語頭の頭文字からLRU法とも,またはより一般には,当時の高等教育・研究大臣の名に因んで「ペクレス法」とも呼ばれている。周知のように,フランスの大学はそのほとんどが国立である。しかし同法の成立により,これまで国家予算で賄われてきた経費の一部を各大学が独自に負担することになった。したがって各大学は費用捻出の必要から企業資本を求めることになり,大学の「私企業化」(または「民営化」)が促される。結果,企業利害に絡まない特に人文系の学部は採算性と効率の観点から切り捨てられる可能性がある。またフランスでは大学入学資格(バカロレア)さえ取得すれば,全国どこの大学でも均一の登録料で入学できる。ところが,独立採算制を採用するようになれば,大学間の競争が生じ入学選抜試験が課されるようになるという事態も考えられる。したがって,公教育における機会平等の理念が侵される恐れがある。さらに大学学長の権限強化も同法の支柱の一つであり,権力の個人集中が生じることが危惧されている。以上のように深刻な問題を孕んだ法の成立を前にし,これに不安を抱く大学生を中心として「連帯」が結成され,抗議運動が組織された。法の「廃止」をスローガンに掲げた運動は,やがて一部の大学職員や高校生も巻き込み,全国規模で展開されることになる。連帯は各地で集会を開き,数万人を動員して,法の公布後二ヶ月を経た2007年秋から2008年春にかけて闘争を続けた。しかし抗議運動に対して,多くのメディアは批判的な姿勢か,あからさまに無関心の態度を示す。メディアの同意が得られず,結果広く世論全般の関心をひくにいたらず,運動は約三ヶ月後に挫折してしまう。本論は,ペクレス法の成立と経緯に触れ,その問題点を整理し抗議運動の動向を追いつつ,運動とメディアによる報道の関係を考察することを目的とする。その際,フランスの全国紙『ル・モンド』による報道と,インターネット上の情報サイト『インディメディア』を調査対象として利用し,この度の運動を歴史的に位置づけるよう配慮した。学生運動は複綜した利害対立の産物である。またこの度の運動は,市場論理とそれを体現するペクレス法への異議申立ばかりではなく,その根底に企業論理に浸りきった既存のメディアに対する批判的眼差しも潜ませている。そのような抗議運動の複雑な様態を明らかにしてみたい。"
URI: http://hdl.handle.net/11149/612
出現コレクション:No.17

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