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武蔵大学総合研究機構紀要 「Journal of Musashi University Comprehensive Research Organization」 >
No.19 >

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タイトル: 都市祝祭祭礼研究・再考
その他のタイトル: Reconsideration of Urban Festival Research
著者: 桑江, 友博
発行日: 2010年5月26日
出版者: 武蔵大学総合研究所
抄録: 本稿は都市における「祭礼」や「祝祭」に関する日本での研究動向を確認したものである。第一に民俗学的研究の動向を確認した。そもそも日本における祭礼・祝祭研究は,民俗学者によるものである。民俗学的研究は,農村と都市という二項図式を前提とし,主に前者を対象としてきた。さらに民俗学が祭りや祭礼を研究対象とした理由を,文化や慣習が祭りや祭礼においては過去からほとんど変わることがなく保存され,実演されているという想定が存在し,それによって現在からでも中世や近世の社会状況や文化状況を議論することができるとみなした。第二に宗教学者である柳川啓一と薗田稔の「祭礼」「祝祭」研究の動向を確認した。これらの研究は,民俗学的研究の知見を踏まえつつ,人類学や現象学的社会学の影響をうけ,新たな祭礼・祝祭研究の領域を切り開いた。すなわち祭礼・祝祭の構造論である。これらの研究は,ヴァン・ジュネップの三段階説(「分離」「移行」「再結合」),リーチの三局面(「形式性」「仮装」「役割転倒」)をうけて,祭礼を「祭儀」と「祝祭」という二つの相反する側面が存在すること,祭礼はこの二つの側面を経ることによってコミュニタス(ターナー)状況を生み出していることを明らかにした。また祭礼は日常生活からかけ離れた特殊なものではなく,「日常生活の現実」とは異なるものの人間社会に必要不可欠な「もう一つの現実」であることをあきらかにした。第三に民俗学・宗教学の研究蓄積を受け,1970年代以降の都市人類学者や都市社会学者による都市の「祭礼」や「祝祭」研究の展開を振り返った。1980年代までの都市祝祭は,松平誠が類型化した「伝統型」と「合衆型」が混然とした状況であり,都市祭礼によって地域社会の結合が再確認され,日常生活との関連性も確認できた。だが1980年代後期から都市祝祭は「合衆型」が中心となる。すなわち,特定の地域や社会集団が担ってきた都市祝祭から,さまざまな社会的背景をもつ雑多な人々が参加し,一時的な充足感を得る機会としての都市祝祭へと変貌を遂げたのである。それに伴い,都市祝祭の研究は,芸能集団や祝祭のネットワーク形成に関する研究や,祝祭の参加する個々の集団に関する研究へと,その研究範囲を広げてきた。また都市祝祭が持っていた「祝祭性」という特徴が,日常生活のなかにも浸透しており,都市祝祭が前提としていた「共同性」が確保されにくい状況が生じるとともに,都市祝祭の「個人化」と呼べる状況が拡大してきたことを確認した。
URI: http://hdl.handle.net/11149/497
出現コレクション:No.19

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