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武蔵社会学論集 : ソシオロジスト 「The Sociologist : Journal of the Musashi Sociological Society」 >
2024年度・2025,No.27 >

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タイトル: 原爆と俳句をめぐる一考察
その他のタイトル: A Study of “Haiku and the Atomic Bombing of Hiroshima and Nagasaki”
著者: 永田, 浩三
NAGATA, Kozo
発行日: 2025年3月1日土曜日
出版者: 武蔵社会学会
抄録: 国内外で空前の俳句ブームが起きている。花鳥風月にとどまらず,戦火のパレスチナでもウクライナでも,いのちの尊さやはかなさを俳句で表現する試みが関心を集めている。17音という限定された言葉を用いて,生と死の境界を詠う俳句。かつて,従軍記者でもあった正岡子規によって,俳句に与謝蕪村以来の社会性とリアリズムが持ち込まれると,戦争などのテーマが積極的に扱われ,俳句投稿欄は,新聞・雑誌の購読者拡大に貢献するキラーコンテンツに育っていった。だが,戦争を詠った前衛俳句は,「京大俳句事件」に象徴されるように,治安維持法による弾圧され,長く沈黙を強いられた。そしてアジア・太平洋戦争の敗戦。桑原武夫は1946年の「第二芸術論」で,俳句には世界に通用する文学性など備わっていないという激烈な批判を展開する。それに反発したのは,かつて「京大俳句」などで弾圧を受けたひとたちだった。自らの表現を奪われたことへのリベンジのテーマのひとつが,原爆を詠むことであった。1954年3月に第五福竜丸が死の灰を浴びたビキニ事件をきっかけに,ヒロシマとナガサキのふたつの被爆地で,原爆を詠った『句集広島』『句集長崎』が相次いで誕生する。それは,名のある俳人,被爆者,原爆に心を痛める市民たちが総結集する空前の文学運動であった。ホトトギス,自由律,新俳句人連盟など,さまざまな流派結社が参加し,この人類の悲劇に対峙した。本研究ノートでは,できうる限り時代を語る証言者にインタビューを行い,一次資料を収集した。その結果これまで知られなかったエピソードを発掘することができた。俳句革新の動きは,米軍占領下・本土復帰後の沖縄でも,原発事故を経験した福島でも,盛んにおこなわれている。今や「原爆忌」「ヒロシマ忌」などの季語は定着し,高校・大学生が競う俳句大会でも原爆を扱うことが当たり前となった。そうした中で改めて,原爆というテーマと格闘する俳句が拓く地平とは何かについて,この研究ノートでは私事を交えてエッセイ風に概説することをめざす。この稿は2024年12月に刊行された『原爆と俳句』(大月書店)をもとにして作成された。詳しい論考,主要文献については書籍を参照されたい。
内容記述: 研究ノート
Research Notes
URI: http://hdl.handle.net/11149/2734
出現コレクション:2024年度・2025,No.27

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