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武蔵大学論集 「The Journal of Musashi University」 >
2022年度・第70巻 第2・3・4号 >

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タイトル: 宗教・倫理と経済学に関する一考察
その他のタイトル: A Study on Religion, Ethics and Economics
著者: 茶野, 努
CHANO, Tsutomu
キーワード: 信頼
幸福の経済学
功利主義
利他主義
公平性・公正性
発行日: 2023年3月24日
出版者: 武蔵大学経済学会
抄録: 本論の目的は,宗教・倫理を経済学的また社会学的観点から考察することにある.宗教・倫理が経済に及ぼす影響に関しては,マックス・ウェーバーの古典的名著『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』があり,我が国については寺西重郎著『経済行動と宗教―日本経済システムの誕生―』がある.宗教・倫理が経済発展に影響を及ぼす一方で,現代においては逆向きの方向性,経済発展が地域社会の紐帯を弱め,科学技術の進歩が宗教的精神を喪失させていることに目を向ける必要がある.本論の構成は以下の通りである.第2節では主流派経済学の抱える問題点を,リカード的悪弊と限界革命,デカルトの機械論の適用,ホモ・エコノミクスと功利主義,社会的ダーウィン主義の観点から整理する.問題は,利己主義的な人間観を前提とし,数理的アプローチによる効率性のみを過度に重視した点にある.第3節においては,主流派経済学の偏向をどのように補正していくべきか,その方向性について歴史主義と弁証法,制度主義,幸福,公平性・公正性,信頼の醸成の観点から考察する.最後に,キリスト教の衰退が主にヨーロッパ社会に及ぼした影響,日本人の宗教観等々について述べ,当面の研究課題をまとめている.結論をまとめるのは難しいが,国内外の様々な巡礼路を歩くことから得られた学びは,効率性と人間らしさのバランスをとることの重要性である.人間らしさとは社会的に,精神的に豊かに生きていくことであり,効率性とは対極に位置する.経済効率性を高めるという御題目の下で進められた改革によって,非正規社員が増加し格差が拡大している.効率性の追求だけでは,人々の幸福感が高まらないことは明白である.アリストテレスは,過剰と不足は悪,中庸が徳であり,善は効用の最大化ではなく節度にあるとする.またチェスタントンは平衡感覚としての「伝統」を重んじるべきだと言う.長い年月を経た伝統的な宗教は,人間が人間らしく生きていくための知恵の宝庫である.主流派経済学が手放してきた宗教や倫理の問題をもう一度引き戻す必要性が高まっている.当面の具体的な研究課題としては,宗教が信頼の醸成において果たす役割,宗教が人間の幸福度を高め得るのか,さらには不平等回避モデルの検証などがある.本論を今後の研究の足掛かりにしたい.
内容記述: 論文
Articles
JEL Classification Codes: A12, B12, I31
URI: http://hdl.handle.net/11149/2473
出現コレクション:2022年度・第70巻 第2・3・4号

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