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武蔵大学論集 「The Journal of Musashi University」 >
2009年度・第57巻 第3・4号 >

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タイトル: マンデル・モデルの動学的安定性に関する一考察
その他のタイトル: Some Considerations into the Dynamic Stability of the Mundell Model
著者: 黒坂, 佳央
笠貫, 達也
発行日: 2010年3月10日
出版者: 武蔵大学経済学会
抄録: 本論文の目的は資産市場と財市場の同時均衡によって為替レートが決定される変動相場制度の下で,マンデルが前提とした将来の為替レートに関する静学的期待と価格水準の硬直性を,短期的にはそれらは所与であるが時間を通じては調整が行われる前提に置き代えて,Krugman and Obstfeld[2009](第16章)の解釈に基づくマンデル・モデルを動学化することである。 本論文は,マンデル・モデルの説明,短期均衡の比較静学分析,動学システムの安定性の検討,長期均衡の比較静学分析,世界金融・経済危機に関する比較動学分析の順序で議論が展開され,最後に,本論文で得られた主要な結果が要約される。本論文で得られた主要な結果は,①短期均衡において自国物価水準の上昇が為替レートを増価させるという結果を導くために仮定された条件─貨幣需要の所得弾力性(ηLY)と経常収支の相対価格弾力性(ηλ CA)との積がある臨界値(Y{1 "C’ (1 "t)CAY}CA)よりも小さい─は,動学プロセスが安定であるための十分条件となること,②長期均衡において完全雇用国民所得の増加により為替レートは増価するという結果を導くためには,この条件が逆転すること,すなわち,貨幣需要の所得弾力性と経常収支の相対価格弾力性との積がある臨界値よりも大きいことが必要となること,このような想定は時間の視野が長いため,弾力的な適応が可能となるマーシャルの意味する長期に対応している,③世界金融・経済危機を金融システムの破綻によるマネー・サプライの急激な低下と実体経済の損傷に基づく完全雇用国民所得の減少と捉えて,マンデル・モデルに取り込んで比較動学分析を行うと,新しい長期均衡点への移行プロセスで自国物価水準の低下,期待為替レートの増価が生じることを観察でき,世界金融・経済危機の発生によってデフレと急激な円高に見舞われた日本経済の状況と一致すること,である。
URI: http://hdl.handle.net/11149/1368
出現コレクション:2009年度・第57巻 第3・4号

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