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武蔵大学論集 「The Journal of Musashi University」 >
2007年度・第55巻 第1号 >

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タイトル: Metzler の在庫循環モデルの数学的構造について
その他のタイトル: On the Mathematical Structure of Metzler's Inventory Cycle Model
著者: 江畑, 嘉敏
黒坂, 佳央
発行日: 2007年7月20日
出版者: 武蔵大学経済学会
抄録: 前期の売上に基づいて今期の生産を事業者は決定する(=ルンドベリー・ラグ)ので、総産出量と総売上の間の不一致が生じるかもしれず、この不一致は在庫の変化によって解消されるという仮定に基づく、ルンドベリー=メッツラーの在庫循環モデルはMetzler[1941]の「在庫循環の性質と安定性」という論文において定差方程式を用いて定式化された。Metzler[1941]論文ではもっとも単純な在庫循環モデルから始めて合計6 つの在庫循環モデルが定式化された。Metzler[1941]論文ではモデルを徐々に複雑化するために追加された仮定がもつ経済的な含意を明らかにすることに焦点が当てられ、モデルの数学的分析は背後に潜められたので、企業が自らの需要を正確に予想できないために必要となる最適在庫を保有するための意図した在庫投資と、現実の需要水準が明らかになったことで生じる意図せざる在庫投資の2 つから在庫循環が発生するMetzlerモデルの動学特性が、十分に解き明かされていないように考えられる。Metzlerは一番単純なケースから始めて、順次モデルの前提を変更することでモデルの複雑化を図り、最終的に6 つのモデルを作成し、逐次代入法による数値例に基づいて分析しているからである。そこで、Metzler の構成した6 つのモデルを記述する定差方程式から導かれる特性根の性質を分析し、その数学的構造を解明することを、本稿の目的とする。本稿におけるオリジナルな貢献は以下の通りである。第1 は、3 階の定差方程式で表わされる第4 モデルの動学的安定条件を、グラフによる分析と、Samuelson の定理を用いた代数的手法による分析に基づいて導出したことである。第2 は、グラフによる分析と代数的手法による分析を組み合わせることによって、特性根が1 実根と共役複素根の組み合わせからなることを証明し、Metzler が設定したパラメーターの条件の下で、国民所得、在庫ストックは時間の経過とともに循環的変動を繰り返すことを導いたことである。第3 は、3 階の定差方程式で表わされる第6 モデルの動学的安定条件を、Okuguchi=Irie の定理を用いた代数的手法による分析に基づいて導出したことである。Metzler[1941]は期待係数が正となる前提の下で動学的安定条件を導いたが、Samuelson の定理を用いて得られた動学的安定条件である2 つの不等式の内1つは不要であることを明らかにしたことが、その内容である。第4 は、パラメーターの値を特定化しない一般的なケースにおいて、特性根の組み合わせがどのようになるかについては明確な結論が得られなかったが、日本経済における直近のデータを用いてパラメーターの値を特定化した場合、特性根の組み合わせは1 実根と共役複素根となる結果を得るとともに、Metzler[1941]が提示しなかった第6 モデルの数値例を作成したことである。
URI: http://hdl.handle.net/11149/1296
出現コレクション:2007年度・第55巻 第1号

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